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2019.03.09
かねてより議論されていた、通信料金と端末費用の分離政策がとうとう前に進みました。これには賛否両論あるようで、私は賛成の立場を取っているので思っていることを書いてみたいと思います。
政府は5日、携帯電話料金の値下げを促す電気通信事業法の改正案を閣議決定した。端末購入を条件に通信料を割り引くといったプランを禁じ、端末と通信を分離する。次々に新機種を買う一部のユーザーに値引きの恩恵が偏らないようにする。透明な競争を通じて通信料が全体として下がりやすい環境を整える。関係省令の改正も進め、今夏にも施行する。
・不明瞭な料金プランからの脱却
これまで散々言われ続けていた、複雑な料金プランの多くは端末購入と費用をミックスしたプランと、2年契約などある一定期間の継続利用を義務づけるところから発生したと考えています。後者については、ビジネスとして長期に使ってくれるのであれば割り引きますよというのは納得できます。ただ、前者については端末料金を全体のプランに混ぜ込んでいるだけで、実際には購入時に安くなっているように見えるものの、総額では端末代を支払っていることになるのです。ある意味、ローンを組んでいるのと同じで、現実にキャリアで購入した分はローンの残高として、日常生活のクレジットの上限にも影響することになります。
・端末の選択肢が不当に狭められる
どんなに高い端末であろうとも、通信費用と端末費用を混ぜたプランにすると、高い端末を購入しているという印象が薄まるために、キャリアで購入した方がお得になると消費者は感じます(前述のように実際にはローンのように毎月支払ったり、解約時に残債を支払わされるので錯覚と言えます)。そのため、キャリアのルート以外で販売する端末の競争力が落ちることになります。日本で流通しているスマートフォンの大部分がキャリアに紐付いている端末で、純粋なSIMフリー端末というのは市場の1割程度であるということからも分かると思います。
SIMフリースマホ上期出荷台数が初の前年割れ、MM総研調査 – ケータイ Watch
SIMロックフリーのスマートフォン出荷台数は、前年同期比7.1%減の134.3万台となり、スマートフォン全体に占める比率は9.7%で0.9ポイント減となった。
もちろん、我々の端末の魅力が足りない、ブランドとしても知名度が低いということは重々承知の上で書きます。SIMフリースマートフォン NuAns NEO/NuAns NEO [Reloaded]のような端末はキャリアのサポートを受けられないため49,800円で販売するのですが、日本で50%以上のシェアを握るiPhoneはSIMフリー版をApple Storeで購入すると10万円前後であるにもかかわらず、最新機種でも数万円、世代が古くなると1円などで販売されているという現状があります。
キャリア端末は、当然ですがキャリアに端末の選択権がありますので、キャリアに選ばれない端末は大幅に販売のチャンスが減ることになります。日本でSIMフリースマートフォンとして、キャリアで販売していないモデルをやっていて存在感を示しているのはASUS社くらいではないでしょうか。かつて、格安スマホというのが流行った時代には、いくつか面白い端末も出てきていましたが、今では淘汰されてしまっています。
今後、通信料金と端末費用が分離され、キャリア販売の端末でも端末本来の価格で販売されるようになるとすると、相対的には価格が上がり、SIMフリー端末も勝負できるようなマーケットになっていくと期待されます。
・iPhoneの販売は減速するか
私は、減速すると考えています。もちろん、iPhoneは素晴らしい端末で、使いやすさや端末のクォリティなどすべての面で他の端末を上回っていると思います。しかしながら、端末自体は高額であることには変わりがありません。これまではキャリアの施策でその端末の高額さが薄れた状態で販売されていたので、日本においては50%以上という高いシェアを誇っています。しかし、世界を見てみると、iPhoneのマーケットシェアは20%を切っています。世界では、日本のような過度な端末と通信料金のミックスによる割安感が出ていないことと、これによりSIMフリースマートフォンが多数発売されていることが原因とあると考えています。
今後、価格がApple Storeで販売されているような金額になった場合、そこまでの高額な費用を出してスマートフォンを購入するのか、そこまで高額でなくても手頃な価格で手頃なスマートフォンでも良いという選択肢が多く出てくれば、そちらに乗り換えていくことが多くなってくると考えています。
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今後、通信業界も楽天の参入があったり、5Gという新しいテクノロジーの時代を迎えて、スマートフォンだけのビジネスでは成り立たなくなっていくと思います。今回の施策で、より通信というコアビジネスにも注力していかなければいけませんし、そのインフラをどのように活かしていくのかということが問われると思います。これまでのキャリア施策に頼ってきた端末メーカーは、より独自性のある端末を開発していかなければいけません。しかし、これはそれぞれ「やるべきこと」であると思います。
通信費用と端末料金の分離が進んで、端末が売れなくなることによってテクノロジーが衰退していくという意見もあるようですが、中長期で見ればそんなことはないと思います。日本は異常なくらいに、端末を安く購入してきたのが、見え方が変わって高くなったように感じますが、それが当たり前の世の中になれば見方も変わります。
これからどのようなマーケットになっていくのか、どんなスマートフォンが登場してくるのか、とても楽しみです。
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このブログを書いたスタッフ
プレジデント
ほっしぃ
音楽からMacの道に入り、そのままApple周辺機器を販売する会社を起業。その後、オリジナルブランド「Simplism」や「NuAns」ブランドを立ち上げ、デザインプロダクトやデジタルガジェットなど「自分が欲しい格好良いもの」を求め続ける。最近は「24時間365日のウェアラブルデバイス|weara(ウェアラ)」に力を注いでいる。
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